ある移住者の独白 〜北海道移住体験エッセイ〜

北海道移住体験エッセイ

北海道での移住生活の雰囲気をエッセイ風にご案内。フィクションですが役に立つ情報がいっぱいです。

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ある移住者の独白。〜冬のエッセイ〜

ネットで「北のお家.COM」というサイトを見つけたのは、確か去年の10月。
子供も私の手から離れ、長年の夢だった北海道への移住を考え始めて暫くした頃だ。
札幌近郊もいいが、仕事でよく訪れていた事もありできればもっと遠くに住みたい。
自然厳しい道東オホーツク地方。できるなら知床に近い地域がいいと思っていた。

札幌や富良野など人気の地域に関する移住情報は多いものの、道東に関する情報は少なく、
やっとのことで見つけたこのサイトに、藁をも掴む思いで問い合わせを入れたのが最初のコンタクト。
掲載されている物件の写真が(完璧とは言わないまでも)かなり詳細だったというのもあるが、
何よりこの地方のサイトで本州からの移住に精通してそうなものが無かったのだから仕方ない。
私はホームページに載っている物件のひとつが気に入り、

「この物件の詳細を教えて下さい」

という、たった1行のそっけない問い合わせメールを送った。
それから何度かメールのやり取りを繰り返し(最初はたった1行だったので返事に苦慮したそうだ)、
家族の数や移住後の仕事の予定。自然の厳しさや必要な対策などを色々相談した。
もちろん実際に住んでみなければわからないことは多々あるわけだが、
既に住んでいる方の実体験は移住の際にやはり役立つだろうと思ったからだ。

そして月日は流れ、今日は移住してから10日目の記念すべき朝。

カーテンを開けて驚いた。外は大雪だ。
数年前の大雪は担当者から話に聞いていたが、まさか移住10日目にしてこれとは。
そもそも、道と庭との境目が無い。昨日まではところどころ土さえ見えていたのに、だ。
今年は使う必要はないかな、と思っていた家庭用の小型除雪機を引っ張り出し、
(担当者から除雪機の必要性を聞かされていたのだ。今思うと安い買い物だったと感じる)
慣れない手つきで除雪機を操り、道路までの道を繋げる。

やはり北海道での生活は決して楽しいだけではないのだな、と痛感しつつも、
妻が入れてくれた、心地よい疲れの後に飲むコーヒーの味は格別だった。
これから北海道はどんな表情を見せてくれるのだろうか。楽しみだ。